2016年4月25日月曜日

キーボードを叩き壊そうと思ったときに思い出す話(下)

昨日の続きです。大航海時代の船旅に成功した船員たちをもてなす晩餐会での出来事です。


晩餐会には、フィンガーボールが設置されていました。フィンガーボールの水は、骨付きの肉や、海老や蟹を食べたときに、汚れた手を洗うためにあります。なんと、晩餐会の途中、ある船員がテーブルの上に置いてあるフィンガーボールの水を飲み始めてしまいました。


毎週のように晩餐会に出席していた貴族たちは、もちろん、フィンガーボールの使い方を知っていました。貧しい家庭の出身だった船員たちだけが使い方を知らず、飲み水だと思っていたのです。


気まずい沈黙が流れていきました。船員の不作法を指摘することは簡単ですが、船員をもてなすために開かれた晩餐会の趣旨にもそぐわないように思われました。また、不作法を言葉にすることで、船員と貴族たちの越えられない溝を決定的にしてしまうようにも思われました。


そのときです、貴族たちは先ほどよりも、さらに驚きました。なんと、館の主であった女性の貴族が、フィンガーボールの水を飲んでいるではありませんか。もちろん、彼女はフィンガーボールの使い方を知っているはずです。あっけに取られる貴族たちを尻目に、彼女は船員たちとの談笑を続けました。


しばらくして、貴族たちは女性貴族の意図を理解します。自分たちだけがフィンガーボールを指を洗うために使ってしまっては、船員たちに恥をかかせることになる。だから、自分たちも彼らと同じようにフィンガボールの水を使うことで、彼らをもてなすのだ。彼女の意図を理解した貴族たちは、一人、二人と、フィンガーボールの水を飲み、晩餐会は高揚感と一体感のうちに終了しました。


20年前のごりらにとって衝撃的だった学びは、「正しさは、相対的である」ということです。ある人にとって正しいことも、他の人にとっては正しくないことがある。同じ人の頭の中でも、ある時は正しいと思っていることも、いつか正しくないと思うことがある。また、場所によって正しい振る舞いが異なることがある。この女性がかっこいいと思うのは、自分の立場の力を使って正しさを振り回さず、弱い立場の相手の正しさの土俵にまず上がってみたことだと思います。


海外に出てみて、日本のやり方と違うことで腹が立つことばかりでした。でも、ごりらの慣れた日本のやり方は、いくつもあるうちの一つでしかないということを思い出さなければならないと、このエピソードは誡めてくれます。この女性のように、有利な自分の立場を捨ててでも、相手の立場に沿った考え方ができるようになりたいと思っています。



(追記)

インターネットで調べてみると、19世紀のヴィクトリア女王が、ある国の貴族をもてなしたときの話として紹介されています。





今日のインプット

なし


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